ストラテラと私とASD
私は現在、診断としてASD(アスペルガー)とADHD(主に注意欠陥)の2つの発達障害を持っているということになっています。
発達障害は、純粋にどれか1つだけというよりも複数を併せ持つ人が多いそうですし、私のようにASDとADHD両方の特徴を持つという人も多いのだろうと思います。
発達障害は、同じ名前の分類であったとしてもその症状の現れ方も生活への影響も薬の効果も、人によってかなり幅のあるものになってくるものなので、私一人の体験というものはサンプルとしてとても頼りない小さなものだと思いますが、同時にそんな小さなサンプル数が増えることには意味があると思います。
ということで、今日は『ADHDとして処方されたストラテラは、私のASD的な要素にどう影響を及ぼしたか』ということについて書いてみたいと思います。
不勉強の為私の理解には間違いも多いかと思うのですが、『大人の発達障害 アスペルガー症候群・ADHD シーン別解決ブック 』内の「ADHDとアスペルガー症候群の違い」という一覧と、『LITALICO 発達ナビ』サイト内の「ADHDとアスペルガー症候群の7つの違い - 症状の比較と合併症状について」を参考に書いていきます。
※よって、ASD(自閉スペクトラム症)への薬の影響ではなく、AS(アスペルガー)への薬の影響という感想になっていきます。ご容赦下さい。
・ 多動
私の場合、じっと座っていられないなどのことはあまりありません。ですが、頭の中の多動(思考がとりとめなく溢れたりぐるぐるしたりして止まらない)ということはあるかと思います。これについては、「減ったようなそうでもないような」という感じです。ただ、意識的に止めようとした時に止まりやすくなったような気がします。それと、そこはかとなく思考の輪郭がクッキリはっきりしたような感じがします。
・ 不注意
これはADHDの問題として挙げられやすいものですが、ASにも『興味のあるものには集中できるが興味のないものには集中できない』という要素があるそうです。私にもその傾向はあるのですが、ある程度意志によって「興味があろうがなかろうが、意味を見出すことによって意識を集中する」という作法を使えるようにしていました。これに関しては、現時点ではあまり変化は感じられないように思います。
一方、ADHD的な『うっかりミス』としての不注意は減ったと思います。「思い出せる・気付ける」が増えたことにより、ミスによる損害が出る前に気付いてカバーできることが増えたのだと思います。ASへの直接的な影響ではないのですが、『ミスをする→パニックになる』というパターンを防げることによる『ASとしての性質への影響』はとても大きいと感じます。
・ 衝動性
ASの場合は、状況が読めないので突然の思い付きで動いてるように見えることもあるそうです。見通しの立たなさも関係してくるケースもありそうです。
感覚過敏の症状が軽くなったことにより状況が読みやすくなった為、『突然の思い付きで動いているように見える行動』は減ったような気がします。先日身内の葬儀があったのですが、その際にも「まわりの状況をよく見て適切に動けている。」「でしゃばらず、かつよく働いていて感心した。」など人伝に聞く周囲からの評価が高かったので、その辺りは確実に影響を感じているところです。
(成人してからの母方の親族での葬儀は初めてだった為、親族は「普段は空気が読めなくて言動がズレていても、ここぞという時はきちんとしている。」と解釈したようです。夫と母は平素の私を知っているので、「薬明らかに効いてるね・・・」と驚いていました。)
・ 話し方
私は子供の頃から『難しい言葉を使ったり大人びた喋り方をする・言葉の意味を字義通りに捉えてユーモアが通じない』というASの特徴が強かった上に、意識的に直すまで早口で一方的なおしゃべりもしていたので、会話というものは散々な有様だったと思います。(現在でも熱中や混乱により一方的な早口で話すことはあります。)
私には、会話に割り込む・自分の話を一方的に話すという衝動性があると思うのですが、これは「会話が見えていない」ことも理由として関係しているのかもしれません。これは、前述のようにストラテラの影響で「状況が読みやすくなったこと」「思考の輪郭がクッキリしたこと」から結果として改善されているようです。
夫によると、薬を服用後の私は指さしや目線を追うことが上手くなり相手の話の内容や流れを理解すできるようになったそうで、それを踏まえた発言もできるようになっているようです。発言の内容そのものも、まとまりが有り分かりやすいものになったようなので、『ASっぽい喋り方』ではあるものの会話のスムーズさには改善が見られたとみて良いのではないかと思います。
・ 対人関係
ASの場合は、『非常に風変り、一方的、冗長で無神経な方法で人とかかわる。他者に言われるがままに動く、自分の気持ちを表せないタイプも。』と書籍にあり、実際私はこの特徴を全て持っているようです。
夫が言うには、「よく喋るので自分の気持ちも考えもハッキリ主張できているようでいて、喋っているのは考察や条件の収集や確認であって、気持ちなどは実は言えていないし場合によっては自覚もしていないと思う。だから、自分の気持ちとしては嫌なのに人の理論に理があると思うと押し負けてしまう。自分の気持ちなのに、人に『本当はこう思ってるんでしょ』と決められてしまうこともある。」とのことで、夫は私をよく観察して研究しているなと思います・・・。
これも、ストラテラの影響により少し変化が起きている気がします。基本的な思考回路や感覚は変わらずとも、『今何が起きているか』を認識しやすくなったことで対人関係を処理しやすくなっているようです。今までの学習の結果がきちんと生かせるようになったのかもしれません。
・ こだわり
ASの、『興味の幅が狭く深い。興味を持ったものの情報や事実を集めるために膨大な時間を費やす。』という要素は私に大いにあって、これをできればとても満足ですし、思うようにできないと辛いくらいです。この情報収集は、家電選びや旅行のプランを練るのにはとても役に立っていると思います。
私は、ある程度「計画外のことが起きる場合もありうる」という認識を持つことで、予定外の展開によるパニックに対応しています。旅行計画が崩れたとしても、そう大きくパニックにはなりません。これは、柔軟に対応できているというよりも『想定されるケースを沢山用意すること』による対処方法を身に着けていると言った方が実情に近いのではないかと思います。
ストラテラの影響としては、想定外のことにビックリしなくなったというものがあります。想定外の事が起きた時に「一旦動揺し、次にそれを落ち着ける」という『自分の内側で処理されていた手続き』が概ね不要になりました。たまにあっても、時間や精神力を多く必要としない感じです。
これが、地味にQOLを上げている感じがします。ビックリしない、怖くない、動揺しないということはいいものです。精神力の余力が生まれたように思います。
・ 感覚
感覚の鈍麻や過敏さを持つASの方は多いそうですね。私もあります。ストラテラの服用により「思っていたよりも感覚過敏の症状があったんだなぁ・・・・」という驚きと発見があったくらい、私の生活には感覚過敏が様々な影響を及ぼしていました。
これにはストラテラが絶大な効果を発揮しました。一般的な薬効なのかは分かりませんが、私の場合は眩しさも皮膚感覚も音の聞こえ方も大きく変わり、ついでに嗅覚も変わって「感覚が夫に近い感じ」になりました。テレビの音から人の声が聞き取れる、洗い物をしていても会話できるし、外を歩いても目を普通に開けられます。シャワーの水滴が痛いことも、流れる水が肌を這うようで気持ち悪いこともありません。卵や肉の強い「生き物の匂い」を感じることもなくなりました。
生きている世界が変わったと言ってもいいかもしれません。私としては、「私の感覚が変わった」というより、私は何も変わらず世界が変わったように感じるのです。今の私は、今までの私の知らない世界を生きているような感じがします。
・ 不器用さ(発達性協調運動障害)
これはASの人にしばしば見られることのようですが、私は子供の頃「何もないところでよく転ぶ子」でした。体操教室やスイミングスクールなど『動きやタイミングについて具体的に繰り返し指導される場所』では特に落ちこぼれることもなかったように思うのですが、学校で『手本を見せる→さあやってみて』という指導を受けた場合はからっきしで、何をどうすればいいのかサッパリ分かりませんでした。
そのような模倣の不器用さは今でもあるかもしれませんが、『動くことそのもの』に関してはストラテラ服用後に改善が見られているようです。視覚情報の立体感が増し、距離感をより正確に掴めるようになったことが大きいのだろうと思います。物にぶつかったり取り落としたりすることが減りました。
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書籍に書かれたASの特徴の項目に対応して書いていったところ、すごいボリュームになってしまいました。重複する所も多いのですが、「それぞれの要素への変化」として、まずはこのまま投稿しようと思います。次の記事で、全体をまとめて振り返ります。